信号待ちで

偶然、以前の職場で一緒に仕事をしていた人と隣り合った。

僕がその職場を離れて10年近く経つが、ぱっと見の印象は最初に会ったときと変わりなかった。クラクションを軽く鳴らされて、「○○君、元気か。」と声をかけてくれた笑顔は僕がその職場に入った頃のままだった。

僕が今どこで何をして働いているかや、その人がもう定年を過ぎて継続雇用となっていることなどを少し話した。信号が青になって、次の信号でその人は右折し、僕は直進した。

特売用の、パレットに目いっぱい積まれたキャベツ箱の山を、リフトの操作をしくじった僕が地面にぶちまけたとき、小言も言わずに黙々とその人が片付けてくれたことを思い出した。今の僕がその時のその人の立場だったら、きっと同じようにはできなかったに違いない。

そんなことをぼんやり考えていると、今別のしくじりをやらかしかねないと思いなおして、僕は運転に集中した。